なぜ成功?クラウドファンディング開始7時間で100万円を達成したカメラバッグ


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ユリシーズの高級カメラバッグ「チクリッシモ」(3万5640円)が好評だ。

メッセンジャーとして体に密着させ、たとえば自転車に乗ったままの姿勢でもカメラがすぐに取り出せる。アジャスターを調整すれば一瞬でショルダーバッグになる。わざわざバッグを地面におろさないでもレンズがサッと交換できる。

そんなチクリッシモは昨年4月、クラウドファンディング「kibidango」で100万円の資金を募集し、開発されたバッグでもある。目標金額は募集開始からわずか7時間で達成し、現在までに226人から665万円以上の資金を集めている。

10年前からずっと作りたかったカメラバッグ

ユリシーズの魚住謙介代表は言う。

「10年前からずっと作りたかったカメラバッグだった。街のバッグ屋さんに『こんなバッグが作れないか』と持っていっても相手にされなかった。一点もので作るのはほぼ不可能だと言われ、9年間、頭の中に眠った状態だった」

2009年に魚住代表が立ち上げたユリシーズは、革のストラップやポーチなどを得意とするカメラのアクセサリーブランド。3年間で徐々に商品のラインナップを増やしながら、バッグの専業メーカーにチクリッシモの図案をあらためて持ちかけた。

だが、そこで突き当たったのが「ロットの壁」だった。

「1色で最低でも200個作らないとダメだと言われた。2色なら400個作らないとダメだと。仮に製作費に1万円かかるとしたら400万円が前金で必要になる。小さい会社としてはキャッシュがいきなり先になくなる。作ってから売りはじめるわけで、利益が出るまではどれくらいかかるかというと、とてもじゃないが大変な話」

初期投資を確保するため、クラウドファンディングを手段に選んだ

Kickstarterの成功事例はすでにいくつか目にしていた魚住代表。すぐにクラウドファンディング用の企画をまとめたが、ただ募集を呼びかけるだけではうまくいかないはずと考え、支援を集めるために3つの方法をとったという。

まずはインプレスのカメラ情報サイト「デジカメWatch」にリリースを送り、ニュース記事として掲載された。アーリーアダプターがどこで情報をとっているか源流をたどっていき、カメラとしてはデジカメWatchになると踏んだのだ。

次に、Facebookでつながりがあるカメラ関係者に向け、仲間内で試作品を見せた。バッグのギミックを伸び縮みさせて見せると、関係者たちはみな面白がってスマートフォンで動画を撮り、自分のタイムラインに投稿、拡散した。

そして最後に、写真とカメラの機材に関するブログで告知をした。10年間以上続けてきており、ユニークユーザーは1日3000人。実は10年前、もとのアイデアを投稿したのがこのブログだった。

「商売を始めたきっかけは、ブログで『こんなものがあったらいいんじゃないか』という記事に『そういうものがあったら欲しい』という反応があったから。ブログで告知したら、ドッと人が来てくれた」

マスメディア、ソーシャルメディア、パーソナルメディア。3つのメディアからほぼ1:1:1の割合で人が集まった結果、目標額を達成できたという。

まだないものを買うのがクラウドファンディング

「kibidango」の松崎良太代表は、今後チクリッシモのような中小零細企業にこそ、クラウドファンディングを開発のばねにしてほしいと話している。

日本のクラウドファンディングは、東日本大地震の被災地支援が認知を高めたこともあり「寄付」の色が濃い。有名人によるプロジェクトも多かったり、手数料が15~25%と高かったりと、中小企業が気軽に使える環境になっていないのが現状だ。

また、世界と比べればまだ投資規模も小さい。キックスターターが単体で1200億円の総投資額を得る一方、日本はまだクラウドファンディング全体で6億円程度でしかない。

だが14年前、従業員がまだ90人だった楽天に勤めていた松崎代表は、日本のクラウドファンディングに2000年代初頭のEコマースのような成長性があると見ている。

「当時はインターネットで買い物なんてありえないと言われていた。モノを手にとらずに買うなんて、という常識を切り替えた。クラウドファンディングはまさにそう。ECにたとえるなら、昔あったものを買うのがオークション、今あるものを買うのがショッピングモール、まだないものを買うのがクラウドファンディングでは」

個人と個人が直接つながる予約販売型のEコマース。まだ市場に課題は残されているが、第二・第三の「チクリッシモ」が今、この瞬間も生まれている。

関連URL
http://kibi-dango.jp/info.php?type=items&id=I0000002
http://ulysses.jp/products/detail312.html

K.M.

書籍・雑誌・WEBメディアの編集者・記者。ビジネス・カルチャー担当です。主な仕事先はKADOKAWA、講談社など。インタビュー、ゴーストライターなど、お問い合わせください。

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