なぜ高学歴者は資産運用で失敗するのか


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先行き不透明な日本経済、増えない賃金、政府の財政赤字、不安な老後の生活設計――。どうにかして自分の蓄えを増やしたい。そんな思いから、資産運用に手を出す人は多いはずだ。

世の中にある数々の投資・資産運用の仕組みを知っていれば、それだけお金儲けのチャンスは巡ってくる。特に知識量が豊かな高学歴者ほど、ザイテクで財を成せる可能性が高いのではないだろうか。

ところが、2015年2月18日付日本経済新聞は「高学歴者ほどご注意、退職金運用、投信でリスク回避」と題する記事を発表し、専門家による財テク指南を紹介。その中で、専門家でFP法人ガイア社長の中桐啓貴氏は「金融機関のセミナーで、『このままだと老後の資金が足らなくなる』などと脅されて無茶な運用をする人がいる。特に高学歴の大企業OBに限って、投資に関する根拠のない自信を持ってしまう」と言及している。
それでは、高学歴者ほど資産運用で失敗する傾向がみられるのは本当だろうか。今回は資産運用失敗で多くの相談を受けてきた赤れんが法律事務所の弁護士、杉山央氏にカイセツしてもらった。

運用資産は財産の一部に過ぎないという考え

杉山氏は、高学歴者で投資運用を失敗する人の共通点として、自分の頭脳を過信して重要事項の説明を読み込まない傾向がみられるという。

「どの投資信託でも商品のリスク説明は必ず事前に行うことになっていますが、高学歴者のなかには、リスク説明の半分も読まずに、すべて理解したつもりになっている人がいます。また基本的には高学歴者には高所得者も多い。低所得者であれば、ちょっとした資産運用にも慎重になりますが、高所得者であれば、運用資産は全財産のほんの一部に過ぎないという甘い考えを持ってしまい、リスク情報を十分に吟味せず資産運用に踏み切ることもあります。それが結果的に運用失敗の悲劇を生むことになるのです」。

また杉山氏によると、利回りの情報に注目するだけで、自分の資産を預ける運用先がどこに投資して利益を生み出す仕組みになっているのか理解せずに失敗するケースもみられるという。同氏はその典型的な例として、2012年、AIJ投資顧問が全国の企業年金基金などから預かった資産の運用に失敗し、ほとんどを消失させた「AIJ事件」を挙げる。

「この事件は、AIJ投資顧問の運用の仕組みと虚偽報告を見抜けなかったことなどが主たる要因とされています。資産を委託する側が利回りのみをみるだけで、AIJ投資顧問の投資運用方法を十分に知ろうとしませんでした。そして、『多くの人が同一商品を買い、利益を上げている』という情報が提供されることで安心して資産を任せてしまい、結果的に多くのものを失いました。実際に周りにいる『成功者』が、悲劇の導火線になってしまうこともあるのです。」。

重要事項を十分に読み、腹に落ちるまで読むこと

それでは資産運用に失敗しないためにどのようなことに気をつければいいのだろうか。杉山氏は非常に基本的なこと、と前置きした上で「資産運用の重要事項を十分に読み、腹に落ちるまで読むこと」、「絶対に儲かる資産運用は存在しないことを念頭に置いておくこと」を強調する。

「どんな商品でもリスク情報は必ず記載されています。しかも多くのページを割いて、しっかり説明しているはずです。それを読むことから始めてほしいものです。それに『絶対に儲かる』という商品を勧められたら、疑ってかかってください。そもそもそのようなオイシイ商品を他人に勧めるでしょうか。リスクが高いと思われる商品でもじっくり読めば、必ず仕組みはわかるものです。分からないのであれば、どこかに嘘があるということです。そして仕組みを十分に知った上で投資してください」。

必ず儲かると断言できる安全商品は存在しない。したがって資産を失うリスクと隣り合わせであることを常に考えておく必要がある。その上で資産委託先の運用の仕組みを十分に熟知し、納得した上で投資できる「謙虚さ」をずっと持ち続けることが、結局、資産運用で成功する早道かもしれない。

インタビュー先:赤れんが法律事務所弁護士 杉山央氏
記事作成:ライター 藤川健太郎


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