「ピア・プレッシャー」マイクロファイナンスを可能にするグループの力学


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貧困削減と営利の追求は相反するものではない。マイクロファイナンスがその実例である。もしこの仕組について詳しく知らなければ「貧困層を対象とした金融サービス」と聞いてあなたが真っ先に想像するのは、昔ながらの非合法な高利貸しかもしれない。

「少額の融資」は成立しない?

「貧困層に向けた少額の融資」が金融サービスに不向きであることは明らかであり、その理由は単純に、貸出コストが高すぎるからである。一方で、貧困から脱するために、資金を必要としている人々が存在する。新興国であれ、先進国であれ、仕事をしてお金を得るためには融資を始めとした金融の仕組みが必要であることに変わりはないのだから。しかしながら御存知の通り、銀行などの一般的な金融機関は担保や一定の信用がある対象にしか融資することはない。

かくして、貧困層の人々がアクセスできる金融サービスはインフォーマルな高利貸しに限定される。事業を行うには元手が必要であり、資本をもたない人々は、ほんの少しの資金でさえ高利貸しに頼らざるを得ないのだ。

そして彼らは年利で100%を越える法外な金利に喘ぎ、その当然の結果として貸し倒れや返済の遅延が蔓延し、持つもの/持たざるものの格差は増大してゆく。世界中の至る所に存在する「社会の病理」ともいえるこうした悪循環を解決する方法はないのだろうか?これに対する回答として最も有力なものの一つが「マイクロファイナンス」である。

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マイクロファイナンスとは?

ここで言うマイクロファイナンスとは、主に新興国で、銀行融資などを受けることが出来ない人々(貧困層の人々など)を対象とした金融サービスの総称である。この仕組みは貧困層の人々に対し無担保で少額の貸付を行い、98%の返済率を記録したことで注目を集めた。

マイクロファイナンスの起源は1970年台のバングラデシュ。ムハマド・ユヌス氏が貧困解決を目指して設立したグラミン銀行におけるマイクロクレジットが始まりである。2011年末時点で世界には3700のマイクロファイナンス機関があり、その顧客数は1億9500万人に上る。また貸出残高は700億ドルを越える(2009年)規模にまで拡大しており、この新しい仕組みが持続可能なものであることを証明し始めている。

マイクロファイナンスは、貧困層向け金融サービスに内在する様々な問題をどのように克服したのか?それを読み解く鍵となるアイデア「ピア・プレッシャー」に焦点を当ててみよう。

仲間(ピア)からの圧力(プレッシャー)

ピア・プレッシャーとはコミュニティが人に与える動機づけ、つまり仲間(ピア)からの圧力(プレッシャー)である。換言すると、個人をそのコミュニティーのルールに従わせようとする同調圧力でと言える。

私たちの行動の多くは仲間の影響で形成される。ピア・プレッシャーがポジティブに作用すれば人間を動かすモチベーションになり、教育効果も期待できる。コミュニティーの秩序を維持することや、解決が困難な社会の問題を解決する力(ティナ・ローゼンバーグのいうところの「ソーシャル・キュア」)にもなりうる。そしてそれがネガティブに作用すれば、自爆テロの正当化(洗脳)などテロリズムに使われるという一面もある。良くも悪くも、行動を集団に合わせたくなるのは、人間の基本的な衝動といえる。

貧困層に資金が届かない理由は、「貸し倒れのリスク」が高いことや「与信調査/資金回収のコスト」が高いこと。つまり融資するための取引コストが高いことが原因だったが、マイクロファイナンスはこのコストを引き下げるための仕組みに「ピア・プレッシャー」を利用した「グループ貸付」を導入することで一定の成果をあげた。借り手はグループを形成し、その中で順番に融資を受けることが出来る。最初の一人が返済を終えたら、次の人が借りることが出来る、といった具合に。いわば連帯責任制度とも言える仕組みだが、農村部のようなムラ社会型共同体においてはこれが有効に機能する。この仕組には次のような利点がある。

・借り手同士が互いにチェックしあうことで、貸し手のモニタリングコスト(調査コスト)が下がる

・借り手自身の返済意思が強固なものになり、貸し倒れのリスクが下がる。

・そもそも、返済可能性の低い借り手は、グループを形成することが出来ず、結果的に貸し倒れが減る。

・借り手のコミュニティはより強固なものになり、情報交換や協力頻繁に行われる。ビジネススキルの教育に役立ち、借り手の事業の成功率が上がる。

「仲間(ピア)からの圧力」と言うと、その功績や弊害について意見が別れるところだが、この場合の返済への強制力にはポジティブな側面がある。コミュニティの力学を活用することで人々の経済的な自立を促すことが出来る点だ。単に魚を与えるのではなく、釣り竿を手渡すことの方が根本的な解決につながる様に、資金を渡すだけでなく、その有効な使い方を知るべきなのだ。

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まとめ

このようなコミュニティファイナンスは、何もマイクロファイナンスによって初めて導入されたものではなく、世界各地で、大昔から存在していたものだ。ピア・プレッシャーが有効に機能するかどうかは、その地域のコミュニティの在り方に依存する面もあり、現在では、その効果に懐疑的な調査結果を発表する研究機関も少なくない。

それでも、お金を媒介とした一種の絆ができることで、助け合い、相互にチェックし合うコミュニティが生まれ、結果的に人々の自立を促すことに貢献する点でその意義は大きく、なにより、銀行がカバーできない範囲に金融の仕組みを届けることが出来る点において、マイクロファイナンスが世界を前進させる大きな力になることは間違いない。

Matsumoto Kaya

日本クラウド証券マーケティング部。インターネット広告会社、ウェブサービス運営会社を経て2014年クラウドバンクに参加。愛用のカメラはNikon D3100。

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