めくるめく紙の世界。TAKEO PAPER SHOW 2014に行ってきた。


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ことさら取り立てて言うことでもないが、印刷メディアとしての紙はデジタルメディアによって置き換えられ、「紙離れ」はあらゆる分野で進行中である。このまま行けば、例えば、伊藤計劃が『ハーモニー』で描いた未来のように紙はデッドメディアとなり、書籍や新聞などは好事家の間でのみ密かに流通するマニアックな存在に成り下がるときがくるのだろうか?印刷された情報を伝達するということが紙の本質的な機能であれば、まさにその通り、紙はすでにその役目を終えつつあるのかもしれない。

紙は記録装置であり同時に「それ自体がプレイヤー」として常に情報を再生し続けていると言ったのはDan Kogaiだったが、ところで、紙が持っている情報とはどんなものだろう。そこにはテキストが印刷されていて、写真やイラストが掲載されている。他には?手触り、匂い、それから重さや硬さ。微妙な汚れや折り目、破れ。

実際のところ、われわれが記号化しデジタルデータに置換することができるのは、紙の持つ情報のほんの一部でしか無い。ということに気づかせてくれるのが「竹尾ペーパーショウ」であり、今回のテーマ「SUBTLE | サトル」は、とりわけ、紙の可能性について考え直す契機となった。

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1965年に始まり第47回目を迎える紙の祭典、竹尾ペーパーショウ。今回は「SUBTLE サトル | かすかな、ほんのわずかの」をテーマに企画・構成に原研哉氏を招いて開催された。(5/25-6/1)

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写真撮影の許可を頂けたので、早速写真付きでレポートしたい。まずは東雲駅から海の方へ歩いて5分ほどのところにあるギャラリー「TOLOT ヒューリスティック・シノノメ」へ。「TOLOT ヒューリスティック・シノノメ」は昨年出来たばかりの話題のアートスポットで、名前の通り、フォトブックサービスのTOLOTが運営する施設で、東雲鉄鋼団地内の工場を再利用したTOLOTの印刷工場の2Fにあるワンフロア約400坪の巨大な貸しギャラリーだ。

トロット・ヒューリスティック・シノノメ(TOLOT/heuristic SHINONOME)
住所:江東区東雲2-9-13 2F
営業時間:11時~19時 (日曜・月曜・祝日休)

SUBTLE サトル

SUBTLEには次のような意味がある。

subtle [sˈʌṭl] 微妙 {びみょう}な、かすかな、繊細{せんさい}な・捕らえにくい、名状しがたい・
[匂{にお}いなどが]ほのかな・[溶液などが]希薄な・鋭い、敏感{びんかん}な、鋭敏{えいびん}な

ここで言うところの「SABTLE」とは展示場のキャプションによると「紙によって目覚めさせられた、繊細な感覚の様相」を表現するキーワードのようだ。

「折る」「透かす」「包む」「かたどる」「朽ちる」……展示されている紙の諸現象を眺めると紙の壊れやすさ(不可逆性)こそが紙に独特の緊張感や崇高さを与えていることが分かる。

本展のディレクター、原研哉氏は紙の本質を追求し、紙の可能性を模索するために以下のテーマを用意した。それぞれのテーマのために会場は4つのエリア(A:CREATION、B:COLLECTION、C:NEW RELEASE、D:紙の肖像)に分けられている。

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エントランスで名刺を渡し、受付を済ませると館内の案内図と一緒に、紙の見本帳を手渡される。
紙の見本帳には紙の名称と共に、展示されている作品の名前が掲載されている。つまり、それぞれの作品に使用されている紙について、その場で詳しく知ることができるようになっている。

A: SUBTLE | CREATION

最初のテーマ「CREATION」は多方面で活躍する15名のクリエイターによるインスタレーション。「SABTLE」が標榜する世界観=”紙が呼び起こす豊かな感覚世界”を、それぞれのクリエイター独自の視点で表現する。

最初に目に入るのは「上の花/三澤遥」。筒状に丸めた紙を鉛筆削りで削りだしたもの。接写はNGとのことだったので、パンフレットに掲載されていた写真。

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展示スペースの奥には原研哉氏による作品が展示されていた。トレーシングペーパーをレーザーでカットして作ったという微細な構造。微生物の造形にインスパイアされたという。

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現代彫刻家である富井大裕の作品は、展示台にあるスリットから僅かに頭を出した上の角。

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ミナ ペルホネン(mina perhonen)の皆川明さんの作品。

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デザイナー色部義昭氏の作品は、格子状に切り抜かれた紙を2枚重ねたもの。格子から透けて見える下地が見る位置によって内容が変化するメッセージになっている。

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B: SUBTLE | COLLECTION

「COLLECTION」は紙にまつわる諸現象を探し出し、編集し提示することで、紙の生み出す価値を紹介するエリア。

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C: NEW RELEASE

「NEW RELEASE」はタイトルの通り、株式会社竹尾の新製品をテーマにしている。2011年秋以降に発表した「風光」「NTラシャ」「ビオトープGA-FS」の紹介など。

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D: 紙の肖像

「紙の肖像」は写真家上田義彦氏による紙の原像17点。

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おわり

出口付近で「SUBTLE」と題された本が販売されていた。今回ヒューリスティック東雲で展示されていた作品の紹介に加え、原研哉氏と数学者の森田真生氏の対談や、原研哉氏とグラフィックデザイナーの山口信博氏との対談などが収録されていた。

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以上、TAKEO PAPER SHOW 2014のレポートでした。帰り道に原研哉先生とすれ違った。まんま雑誌でみた通りの白髪にシルバーフレームの眼鏡、黒いシャツという出で立ちで遠くからでもすぐ分かった。話しかけようか迷ったが、「面白かったです」みたいな感想しか咄嗟に出てこないから無言ですれ違うと、原氏はそのまま会場近くの蕎麦屋へ消えていった。

Matsumoto Kaya

日本クラウド証券マーケティング部。インターネット広告会社、ウェブサービス運営会社を経て2014年クラウドバンクに参加。愛用のカメラはNikon D3100。

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